ビジネスや営業の現場で当たり前のように語られる「Win-Winの関係」。上司:「ここは少しサービスしてWin-Win(ウインウイン)に持っていくしかないよ」 このような言い方が日常化しています。しかし、なにかが間違っていないでしょうか。まだウインウイン(Win-Win)なんて言ってるの?
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▼広告代理店での営業マン、教育産業での部長職を経て、キャリアアドバイザー(講演+インターネット事業)として独立した筆者が、ホンモノの成功者を輩出するために執筆しています。
まだウインウイン(Win-Win)の関係なんて言ってるの?
ウインウイン(Win-Win)の関係とは?
ウインウイン(Win-Win)の関係とはアメリカの経営学者コヴィー博士による「7つの習慣」のひとつであり世界中で3千万人ものひとが書籍を手にしています。これを聞きかじった会社員も多く、上司が部下を指導する際に誤って用いられることも多々あります。
そもそも「7つの習慣」はビジネス理論というよりは、個々の動き方に焦点を当てた成功哲学ですし、成功哲学というよりも人格向上の哲学というべき側面があります。その構成は以下の通りです。
個人としての人格を鍛える理論
・第1の習慣 主体性を発揮する
・第2の習慣 目的をもって始める(終わりを思い描くことから始める)
・第3の習慣 最優先事項を優先する(優先順位の法則)
個人と個人の関係性を鍛える理論
・第4の習慣 Win-Winを考える
・第5の習慣 理解してから理解される(まず理解に徹し、そして理解される)
・第6の習慣 相乗効果を発揮する(シナジーを創り出す)
・第7の習慣 刃を砥ぐ
このような構成ですので、会社と会社の取引や、営業マンと担当者、顧客の間に Win-Winの関係を設定するのには無理があります。ネット上に紹介されている「さわり」を読むだけでも個人や社内の人間関係に軸足を置いた理論だとわかるはずです。
そのレベルのウインウイン(Win-Win)の関係では売れるはずがない
「互いの利益になるようにウインウインの営業(商売)をしなさい」と指導する上司がいるようです。「押しが弱い!」「もっと売り込みなさい!」という1990年以前の亡霊のような理論よりはいくらかマシですが、そもそもウインウイン(Win-Win)の関係は、個人と個人が尊重し合うという部分をテーマにした習慣であり会社と会社の取引に応用するには慎重な吟味が必要です。
ウインウイン(Win-Win)の関係では、勇気(行き過ぎると傲慢さ)と思いやりのバランスが語られています。人間同士の関係なら勇気と思いやりという座標軸は有効かもしれませんが、会社同士に当てはめるのにはやや無理があります。
仮に会社同士の取引(営業マンと顧客、営業マンと担当者、販売員とお客)の関係にウインウイン(Win-Win)の関係を当てはめるとしても、劇的な売り上げにつながることは全くないと思います。その理由は3つあります。
そのWin-Winがダメな理由1 商取引はそもそもウインウインの関係
会社や商店がモノやサービスを提供し、顧客がお金を払い欲しいものを得る関係は、その成り立ちからして初めからWin-Win(ウインウイン)です。会社同士に改めてWin-Winの概念を当てはめるのは、ある意味ではこっけいです。コートを着た人間に、コートの着用を勧めるようなものです。
Win-Winの関係の正確な説明は以下の記事をご覧ください。
コヴィー博士のビジネス書「7つの習慣」第4の習慣〜Win-Winの関係〜
多くのビジネスマン(会社員、営業マン)が基本的な規範としている「7つの習慣」。この記事では7つの習慣のうち第4の習慣「Win-Winを……
そのWin-Winがダメな理由2 すでにバレている
努力をして顧客や取引先に十分以上に貢献し、その対価としてお金を受け取る。このことをWin-Win(ウインウイン)の関係と呼ぶのなら、それは他社の営業マンも当然に行っていることではないでしょうか?どんなビジネスマンでも自分自身の努力や能力をよく分かっていますので、ライバルに先んじているはずだと思っています。しかし冷静になって考えれば、他社のビジネスマンもビジネス書を読むはずですし努力をしないはずがないのです。すると顧客から見れば「努力をして十分以上に貢献する」という意味でのWin-Winの手法に会社や営業マンによる差はありません。
例えばあなたがガソリンスタンドを使うとき、どのスタンドもただガソリンを売るということに気づきます。元気の良い挨拶に始まり、追加料金なしで窓ふき、ゴミ捨てなどを行ってくれます。聞けば丁寧な道案内があり、最後には誘導をしてくれます。このことはもはやガソリンスタンドの差につながりません。
そのWin-Winがダメな理由3 まともな会社はまともなウインウインを語っている
個人同士の関係について言及したWin-Winの関係を会社間の取引に当てはめる上司が多いようです。一方まともな会社はすでに会社が試みるべきWin-Winの関係をすでに実践しているように見えます。
例えばトヨタ自動車はプリウスに次ぐ次世代の自動車として2011年から小型ハイブリッド乗用車「アクア」を売り出しています。このブランドの浸透のために、トヨタは全国で住民から「アクアレンジャー」を募って環境保護活動を行っています。
アクア・ソーシャル・フェスの「北上川(岩手県)流域再生プロジェクト」では伐採された森を復元する活動を行っています。森の復元に興味を持った地元住民が「アクアレンジャー」として参加して植樹などを行っています。トヨタはこのアクア・ソーシャル・フェスの取り組みを全国で行っており、自動車アクアの売り込みや説明は一切ありません。
この活動により次のような多角的な利益が生まれています。
・参加した住民 … 楽しく社会貢献活動に参加できた喜び
・地域住民 … 北上川流域の森の復元による環境の向上
・トヨタの担当社員 … 社会貢献となる活動にやりがいを感じる
・トヨタ自動車 … 「アクア」のブランドイメージ向上
このレベルの活動が本来の企業が行うウインウインであり、人・組織・地域など主体の性質を問わない相互関係が企業が関与すべきウインウインの関係です。
もしあなたの上司が「ウチと向こうの会社の互いの利益になるように譲歩すべきは譲歩し……」などと発言しているとしたら、何とも表現しようがない、思わず無口になってしますレベルだと分かるはずです。
強みがある商品・サービスがあればトヨタ風のWin-Winの関係が通用
もしあなたの会社がある程度他と差別化できる商品、サービス、技術を持っているのなら、トヨタ風の多角的なウインウインの関係を実践すれば順調に売り上げが出るはずです。
しかし激戦の市場で、商品・サービスの差別化が困難な場合、give&giveの手法が脚光を浴びるはずです。簡単にいえば顧客に役立つ情報を提供し一切見返りを求めないところからすべてが始まる法則です。give&giveはその概念をある程度理解している状態で、そういう売り方をしている会社やビジネスマンと出会うことが腑に落ちる近道です。
ビジネスをモノを売る過程ではなく社会貢献と考え、一部の顧客にはオールロスト(与えて終わってしまった)でも構わないと考えることです。この考え方を初めて知ると、顧客にナメられ甘い汁を吸われると思う方もいらっしゃるようですが、世の中の大半の人は施され続けると気になって仕方がない善人です。この大半の人をターゲットにすれば良いということですし、give&giveの手法は最終的には収益化が可能になっています。
Win-Winの関係の正確な説明は以下の記事をご覧ください。
コヴィー博士のビジネス書「7つの習慣」第4の習慣〜Win-Winの関係〜
多くのビジネスマン(会社員、営業マン)が基本的な規範としている「7つの習慣」。この記事では7つの習慣のうち第4の習慣「Win-Winを……
【おまけ】メンタリストDaigoのビジネス書は意外におすすめ
ビジネス理論は、現代思想→経営学(欧米の大学など)→欧米のビジネス界→インターネット→翻訳書→和書の順で流れてくるように感じます。あまり定番とされる翻訳書や和書ばかり気にしていると、古い手法であったり相手方も読んでいたりする可能性も大きいです。ちょっとヒネりのある著書を頼るのもひとつの手です。メンタリストDaigoの本は、軽い内容ですが視点が面白く、20代や30代の方にもおすすめです。
出典:楽天ブックス(画像はクリックに対応)
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